はじめてのえんそく






僕とお母さんには特技のようなものがある。
読んだ本の内容を記憶すること。
いくつかの似たような内容を組み合わせて応用させること。
まぁ、それだけのことなんだけど。



そんな特技を持っているお母さんだけど、何故か知らないことが多い。
そして知らないことを知るために・・・・・



「『みんなで遊べる公園特集』『ミニミニ動物園』『最新★みんなで楽しめる公園情報』・・・・・今回も色々集めたね・・・」
知りたいことに関係する本や雑誌を納得がいくまで読み漁る。
今は遠足に関係ありそうな本が部屋にわさっと30冊くらい集められている。


「今月の気象データを30年分調査してみました。統計では明日は絶好の遠足日和になりそうです」
「そ、そうなんだ」
「そういうことです。遠足に行きましょう」
パタンと手に持った本を閉じて、ニッコリと笑う。
因みに持っていた本のタイトルは『子供が喜ぶ可愛いお弁当』だ。
作る気なんだネ、可愛いお弁当を・・・・・







「遠足にはおやつが必要です」
「・・・・・」
「一般的には『おやつは300円まで』となっているようですが、近所のスーパーや小売店のお菓子の相場を調査したら300円ではなかなか厳しいと私は考えました。物価の高騰はお菓子にまで広がっているんですね・・・」
「・・・・・はぁ」
「?????」
遠足説明会とのことで、僕と風眞は呼ばれたんだけど。
物価の高騰とか言い始めたんで風眞はポカーンとした顔をしている。
8歳の子供にその話はないでしょうよ。


「そこで、今回の遠足はちょっと奮発しちゃいます。1人400円で好きなおやつを買いましょう」
「はーい」
「はい」
「はいはいはーい!!」
いつの間に話の輪に仲間入りしてるんですか、お父さん・・・
「それでは、早速お買いものです」


※ ※ ※ ※ ※



「えんそく、たのしみね。みんなでおでかけ、うれしいな」
「うん、楽しみだね」
僕と手を繋いで横を歩く風眞は微かに笑って明るい顔をしている。
こうして見ると以前に比べて格段に表情が豊かになったよな。
「リクおかあさんとおべんとうつくるのよ。そうちゃんのすきなからあげもつくるの」
「じゃあ、お弁当も楽しみにしてるよ」
唐揚げなんて子供には危ないかもしれないけど、お母さんがついてるから心配はない。
おっとりとしているようで周りに目を向けているからなぁ。



「さぁ、各自自由におやつを選びましょう。選んだらこのカゴに入れて下さいね。ちゃんと後で自分のって分かるようにしておくんですよ?」
スーパーのお菓子売り場に到着。
グリーンの買い物籠を片手に僕たちに指示を出す遠足隊長。
一番ワクワクしているように見えるのは気のせいだろうか・・・


「リク、バナナはオヤツに入るの?」
「バナナはおやつに入りませんよ。だからといって大量にバナナを持っていくとゴミが大変だから適量にしましょうね」
「もー、リクってば先の事まで考えててお利口さんで可愛いんだからっ!」
「くっついていないで天もおやつを選んで下さい。私も自分のを選びますから」
お父さんのアホっぷりが際立つ会話だ・・・


「そうちゃん、なににするの?」
「んー・・・グミとプリッツとキャラメルかなぁ・・・」
「わたしは、いちごみるくとわたがしとコアラのマーチにしよっと」
自己主張の少ない風眞にしては珍しい。
好きなものを選んでいいって言われてもジッと悩んでしまうと思ってたのに。


※ ※ ※ ※ ※



「おやつは無事に購入できました。それぞれ自分のかばんに詰めておきましょう。他に必要なものは、レジャーシート・ポケットティッシュ・ハンカチ・タオル2枚・ビニール袋3枚……後はお弁当と水筒です。これは明日の朝に入れましょうね」
「はーい」
「はい」
「はいはいはーい!!」
「それでは、荷物の準備を始めましょう」


いつ用意していたのか分からないけど、お母さんは僕と風眞に小さいリュックを渡してくれた。
僕が紺色、風眞が赤。
僕のには名札のプレートを持った小さいイヌ、風眞のにはヒヨコのマスコットがついていた。
「かわいい・・・」
丸くてぷわぷわしたヒヨコが風眞の感性にクリティカルヒットしたらしく、荷物を詰めながらヒヨコを手の中で転がして楽しそうにしている。
今日は何というか子供らしい一面をよく見るなぁ・・・


持ち物の準備をしていると、ふとお母さんの様子が気になった。
・・・・・嬉しそう?
家族で何処かに出かけることなんて滅多にないからかな?
ま、風眞もお母さんも嬉しそうなら何でもいいや。







「いいお天気です。絶好の遠足日和ですね!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
ニコニコと窓の外の空を見るお母さん。
今日はいつもの分厚いメガネをかけていないから表情がよく分かる。
うん、そうだね、いいお天気だよね・・・
でも・・・・



「いやだー!!!俺だけ仕事なんて、いやだぁーーー!!!」
「煩い、スケジュールはちゃんと事前に伝えておいた。子供の前でみっともない」
「いいじゃん、撮影なんて明日でもさぁ」
「お前の都合で他の人に迷惑をかけるな。あまり我儘を言うとリクさんにも呆れられるぞ」
「!!!!!!!!!」
がぁぁぁぁーーーーんとした表情でお母さんを見るお父さん。



「皆さんに迷惑をかけてはいけません。お仕事が終わったら来て下さいね?」
お父さんを見上げて少し首を傾げて話すお母さん。
お願いというか命令というか・・・
兎に角、お父さんはお母さんのこの仕草にスゴく弱い。
「勿論だよ、仕事なんてチャッチャと終わらせて行くからねっっ!!ほら、行くぞ、聖」
「・・・・・ありがとうございます、リクさん。風眞、楽しんできなさい」
「はい。おとうさんも、おしごとがんばってきてね」
聖さん(風眞のお父さん)は目を細めて頷くと、風眞の頭を撫でて家を出ていった。


※ ※ ※ ※ ※



「さ、出発です。2人とも準備はいいですか?」
「はーい」
「はい」
リュックを背負って水筒を下げて準備万端。
目的地は5駅先の公園。
風眞の体調を考えれば妥当な距離、寧ろ病院に行く以外では遠出とも言える。


「荷物が重いとか疲れたとか、遠慮しないでちゃんと言うんだよ?」
「うん、ありがとう」
小さいリュックとはいえ風眞の細い身体には負担になるように見えるし、子供用の水筒だって肩に食い込んでる気がしてならない。
うーん・・・どっちも持ってあげた方がいい気がする・・・


「ねぇ、創司。何を心配しているのかは大体分かりますけど・・・風眞ちゃんの様子は私が責任を持って見ていますから、このままにしててください」
僕の左手を握ったお母さんがコッソリと話しかけてくる。
「お母さん・・・?」
「理由は後できっと分かります。さぁ、電車に乗りますよ〜」



先頭車両に乗って楽しそうに窓の外の景色を見る風眞とお母さん。
「そうちゃん、ここからみるとせんろがグーンってなっていっしょにはしってるみたいよ」
「電車の運転も面白そうですね。少し観察して覚えておきましょう」
・・・・・景色を楽しんでいたのは風眞だけか・・・
っていうか、お母さん、何を学ぼうとしてるんすか・・・



暫くボンヤリと外を眺めていると、下車駅のアナウンスが流れた。
「そろそろみたいだよ」
2人共名残惜しそうだ。
「今度、もっと沢山電車に乗ろう」
遠足は未だ始まったばかり。
・・・・・次回の予定は何となく決まったけど。


※ ※ ※ ※ ※



「到着です。先ずは『ふれあい動物園』に行きましょう。小さい動物さんと遊んだり抱っこ出来るそうです。モルモットさんやウサギさんとかフワフワしてて可愛いですよ」
「ふわふわ・・・」
ぽーっと頬を桃色にさせてる。
多分、物凄く幸せな想像をしちゃってるに違いない。
でも・・・
「アレルギー検査に異常はありませんでした、大丈夫ですよ。」
心配無用でした。
お母さん、抜かりなし。



『ふれあい動物園』
入園して直ぐに白と茶色の毛玉がモゾモゾと近づいてきた。
「さわっていいの?」
「はい、動物さんは怖がりなので優しく首の辺りを撫でてあげてくださいね」
近づいてきた毛玉(モルモットだった)の傍に座ると、風眞は小さな手でそっとその背中を撫でた。
「やわらかい・・・」


毛玉は風眞に警戒心を抱かなかったらしく、じっと撫でられている。
「モルモットさんは風眞ちゃんとお友達になりたいみたいです。抱っこしてあげましょう。そのまま両腕を前に出して下さい」
お母さんは慣れた手つきでひょいっとモルモットを抱き上げると、風眞の腕に乗せた。
「わぁ・・・・」
「おしりの所を支えてあげてください。モルモットさんが安心します」
「あったかい・・・トクトクしてる・・・」
「そうですね。モルモットさんも私達と同じように生きてるんです。小さくても大きくても、見た目が違っても、皆よりも少し変わった部分があっても、あたたかくて心臓がトクトクしているのは同じです」
お母さんも毛玉を1匹抱き上げると、その頭を撫でながら話し続けた。
「このあたたかさと心臓の音を覚えておいて下さいね。きっといつか、その意味を考える時が来ると思いますから・・・・・・はい、リク先生のお話はお終いです。動物さんといっぱい遊びましょう。それからお楽しみのおやつの時間にしましょうね」


※ ※ ※ ※ ※



「ふわふわしててかわいかったね、いっぱいあそべてたのしかった!!」
冷たい麦茶を飲みながら、風眞が嬉しそうに話す。
「うん」
その後、ふれあい動物園で僕たち(主に風眞)は動物さん達に大歓迎を受けた。
いくら人に慣れているとはいえ、あちらから積極的に近づいてくるなんてアリなんだろうか。
そういえば最初に風眞に近づいて来た毛玉は、ずーっと風眞の傍から離れなかったな・・・


「さぁさぁ、おやつです。私は大好きなサラダせんべいを持ってきました。風眞ちゃんと創司にもおすそ分けです、はい、どうぞ」
手渡されたサラダせんべいを3人で並んで座って食べる。
初夏の爽やかな風が木々の香りを運んできて心地いい。
「えんそく、たのしいね」
リュックから取り出したわたがしを僕とお母さんに分けてくれながら、風眞はニコニコと笑っている。
「そうだね」
穏やかにゆっくりと流れる時間。
その時、その場所を楽しむなんて事、いままで無かった気がするなぁ・・・


「私も楽しいです。皆が楽しいと笑っていられるのは素晴らしい事ですね」
空を眺めながら独り言のように話すお母さん。
楽しいと言っているのに少しだけ寂しそうだ。
「お父さん、きっとお弁当は一緒に食べられるよ。お母さんのために真面目に仕事して、それこそ飛んで来るって」
冗談のようだけど本当の話。
きっと又、色々と決まり事を無視して此処に来るだろう。
無茶苦茶だ・・・


「天ですか?そうですね、天も来たらもっと楽しいでしょうね。ボンヤリしてたらおやつもお弁当も全部食べられてしまうから気が抜けないかもしれませんけど」
あれ?
お父さんが居ないから寂しそうだったわけじゃない?
・・・・・それはそれで可哀想だネ、お父さん。


※ ※ ※ ※ ※



「お嬢さん、1人?」
「こんな所でボンヤリしてるなら楽しい所に行こうよ」
暫くまったりとしていると、2人のおにーさんが嫌な笑顔でお母さんに話しかけてきた。
メガネしてないと目立つ顔してるからなぁ・・・
それにしても、公園の中にもこんなヤツらが居るのか。
困ったもんだ。
「1人じゃありませんし、ボンヤリしてませんし、此処は楽しいですよ?」
「「・・・・・・」」
おっとりとした口調で少しズレた返答をするお母さん。
ナンパされてるんだけど、分かってる??


「そうちゃん・・・」
心配そうな顔で風眞が寄り添ってくる。
「大丈夫だよ」
大丈夫なのは大丈夫だけど。
はて、どうしたものかな。
痛い目に合わせるのも気が引けるし。


「私達はこれから遠足の続きを楽しみますので、坊や達も私みたいなオバさんに構っていないで元気に遊んで来るといいですよ?」
「「?????」」
おにーさん達は一瞬固まった後、笑いながらお母さんの両腕をつかんで立ち上がらせようとした。
「えーと?私なら1人で立てますよ?」
「お嬢さん天然?それとも狙ってるの?」
「年下の子に坊やとか呼ばれるとは思わなかったから、ビックリしちゃった」
いやいや、おにーさん達(大学生くらい?)の方が年下ですよ。
・・・・・って突っ込みを入れてる場合じゃないか。



「申し訳ありません、そういう事をされると僕たちも非常に困りますし貴方達もきっと困ることになると思うので止めていただきたいのですが」
穏便に、穏便に。
子供に割り込まれて興冷めしてくれればいいんだけど。
「行こう」
・・・・・スルーかい!!
困ったなぁ。
風眞とお母さんの前ではイイ子でいたいんだけど、そうも言ってられないか・・・


「リクおかあさんをつれていかないで!!」
ぎゅっとお母さんを背中から抱きしめる風眞をチラっと見下ろすと、鬱陶しそうに1人が風眞の華奢な肩を小突いた。
「あっ・・・!!」
「きゃっ」
それはきっと軽い力だったんだろうけど、小さな身体を倒すには充分な力だった。
ぐらりと地面に背中から倒れる寸前で抱きとめられたからよかったものの・・・
・・・・・・これは、もう、本気を出しちゃっていいって事かな?


「謝りなさい!子供に向って手を出すなんて最低です。自分のした事を恥じ、今直ぐに彼女に謝りなさい!!」
風眞を少し離れた所に避難させておにーさん達の相手をしてあげようと思った矢先、お母さんの激しい怒りの声が響いた。
こんなお母さんを見たのは初めてだけど・・・
普段が普段だけに怖すぎる・・・
「別に怪我させたわけじゃないんだし、そんなに怒らないでもいいじゃん」
「俺達の邪魔したその子が悪いんじゃねー?」
反省の色がない。
こんなヤツらも世の中には居るんだ。


「自分がやられて嫌な事を人にしてはいけない。簡単な事なのに、それを分からない人がどうして多いんでしょう・・・」
「・・・・・」
我慢が出来ず、お母さんの腕をつかむ手を引き離そうとしたその瞬間。
ぺいっと背中を引っ張られ、そのまま風眞の隣に座らされた。
「ガキんちょは此処で大人しくしてなさいな。すぐに終わるから」
「おと・・・」
少し乱れた金髪を掻き上げてお母さんの方に振り返る。
「・・・・・・」
あ、ヤバい。
さっきは状況をよく見てなかったんだ。
背中から見ても分かる凄まじい怒気が・・・
シロウトさんには分からないだろうから、この先が怖いな。



「その手を離して此処から失せろ」
「な、何だよコイツ・・・」
離せと言われて素直に離すほど頭のいいヤツらじゃなかったらしい。
「い、痛っ・・・」
ムキになったのか余計に握る手に力が入ってしまったらしく、お母さんは顔をしかめた。
「お願いしてんじゃねぇ、命令してんだよ。こっちが大人しくしてやってるうちに失せろよ。10秒以内に俺達の視界から消えねぇと、この世界から存在自体を消してやってもいいんだぜ?」
さっきまでの怒気とは桁が違う、殺気。
本気だ。
すっごいヤる気満々だ・・・
「っ・・・・」
この段階になってようやくおにーさん達は命の危険を察したらしく、そそくさと退散していった。


※ ※ ※ ※ ※



「風眞ちゃん、怖い思いをさせてしまってすみませんでした。創司も気を使わせてしまいましたね、すみません。私、もっとしっかりしなくてはいけませんね・・・」
「リクは悪くないよ?リクはしっかりしてるよ?自分の身の程も知らないおバカちゃんの為にそんな顔しないで」
しょんぼりと項垂れるお母さんをぎゅーっと抱きしめて頭を撫でるお父さん。
普段はウザいと思うけど、今は暫くそうしていて頂きたい。


「わたしはだいじょうぶです。あ、あの・・・リクおかあさん・・・」
「はい・・・」
そっと手を握ると風眞は柔らかく笑って言葉を続けた。
「みんなでえんそくをつづけましょう?いっしょにつくったおべんとうもたべなくちゃ」
「・・・・・はい、そうですね」







「えんそく、たのしかったね。おやつもおべんとうもおいしかったね!」
「風眞の作った唐揚げすごく美味しかったよ」
「またリクおかあさんとつくってあげる。そうちゃんすきだから、そうちゃんのすきなものをつくれたらうれしいの」
「ありがとう、楽しみにしてる。それじゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」



風眞が眠った後、リビングへ行くとお母さんは本を読んでいた。
「今日はありがとう。風眞、すごく喜んでたよ」
「それはよかったです。創司も楽しかったですか?」
「楽しかったよ。でも・・・・どうして急に遠足なんてしようと思ったの?」
まぁ、風眞の体調は最近安定してるし、遠足にはもってこいの季節だけどね。


「創司も風眞ちゃんも普通の子供達と同じように学校に通っていないでしょう?学校ではね、遠足を通して協調性を養ったり、机の上では分からない事を学んだりするんですって」
僕たちも他の子達と同じように色々な事を経験させたいっていう気持ちか。
・・・・・あれ?
ちょっと待て。
お母さんは遠足について調べていた。
って事は、お母さんも遠足は初めてだった?


「そうそう、どうして貴方に風眞ちゃんの荷物を持たないようにお願いしたか分かりましたか?」
「え?あ・・・・・自分で持って歩いたお弁当やおやつは、食べるその時まで一緒に遠足をしてきたから 何となく美味しいと思うかな・・・とか?」
「はい、正解です。貴方は優しくて頭のいい子だからいつも沢山心配をしてしまいますね?それはとてもいい事です、私も母親として鼻が高いです。でもね、出来る事をさせてあげないのは相手の為にならない時もあるんですよ。経験は人を成長させます。何の関係があるか分からない事も、いつかはその人を作る土台の1つになるのです」
遠足が終わるまで風眞は疲れたとも荷物が重いとも言わなかった。
普段の生活よりも少しキツい負荷がかかっていたのに、それを頑張って乗り越えていた。
お菓子を選ぶとかお弁当を作るとか本当に些細な事だけど次へと繋がる経験の1つになったのは間違いない。


「又、遠足に行こう」
「はい。今度はもっと遠くへ行ってみましょうか」
「近くても遠くてもいいよ。みんなで行ければ何処でも楽しいから」
「・・・・そうですね」
お母さんは優しく僕の頭を撫でると、もう遅いからおやすみなさいと言ってリビングから送り出してくれた。
きっとお母さんも初めてだった遠足は、色々あったけど楽しかった。
僕にとっても何かの経験になったんだと思う。
きっと・・・


※ ※ ※ ※ ※



「今日はごめんね。もっと早く行かれれば嫌な思いをさせないで済んだのに」
「天が気にする事はないんですよ。今度から気をつけます。あんな坊や達に甘く見られないように、威厳を付けようと思います」
「リクは変わらないで。"今度"は無いようにするから、大丈夫・・・」
「あまり私を甘やかしてはいけませんよ?」
「甘やかすよ。甘やかされてもダメにならないって分かってるから、ベッタベタに甘やかすんだ」
「甘やかすと言って甘えてくるんですね、貴方は」
柔らかい金の髪にそっと指を通すと、天は気持ちよさそうに梨紅の首筋に頬を擦り寄せた。



「で、初めての遠足はどうだった?」
「楽しかったですよ。楽しくて、少しだけ・・・私の子供の頃を思い出して寂しかったです」
「・・・・・」
「ああ、でもね、あの時があったから今がもっともっと楽しくて幸せと思えるんですよね。悪いことばかりじゃありません、人生において無駄な出来事なんて何1つないんですから」
「そう・・・だね」



皆にとって初めての遠足。
そこから得るものはそれぞれ違うけれど、きっと明日の自分の欠片の1つになる。
目を閉じて、笑う子供達を思い出して梨紅はそっと微笑んだ。









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